血流という一本の軸で灸を読み直す
灸の効果は伝統的に「温める」「巡らせる」と語られてきた。本書はこれを、測定可能な一つの量——組織血流——に翻訳し、どの灸法が、どの部位の血流を、どれだけ、どのくらいの時間変えるのかを、原著データに基づいて記述する。二分冊の②にあたる本書がその中核である。血流そのものの生理学と灸の物理は①に収めた。
00本書の読み方とエビデンスの階層
灸と血流の研究は、質の分布が極端に偏っている。基礎生理学(動物実験・健常者実験)は精密だが対象が狭く、臨床試験は対象が広いが方法論的な質が低い。この非対称性を意識せずに読むと、必ず結論を過大評価する。
本書は原著の報告値だけで構成する。報告値を超えて編者が可能性を述べる箇所は、1冊につき2件までとし、いずれも「考察」「臨床仮説」等のラベルを付けた囲みの中に置き、成立しない条件を併記する。囲みの外の本文に、報告されていない因果や機序を書かない。ラベルのない断定は、すべて原著の報告値か、原著の著者自身の結論である。
本書が採る証拠の格付け
| 階層 | 研究デザイン | 灸研究における典型的な弱点 |
|---|---|---|
| A | 盲検化されたRCT/Cochraneレビュー | 本数が少ない。偽灸の妥当性が課題 |
| B | 健常者クロスオーバー実験(LDF・NIRS等) | n が10〜80と小さい。短時間観察 |
| C | 動物実験(機序解明) | 刺激条件がヒトの臨床と異なる |
| D | 非盲検RCT/単群前後比較 | 中国語文献に集中、出版バイアス大 |
| E | 実技者による実測報告・症例報告 | 査読なし。ただし温度データは有用 |
灸の臨床試験は、圧倒的多数が中国で実施され、非盲検・小規模・陽性結果に偏っている。本書が臨床章で示す効果量は、そのバイアスを含んだ数値である。一方で第I部〜第IV部の生理学的データは、盲検化の必要が小さい客観指標(温度・血流量・心拍間隔)に基づくため、相対的に信頼できる。「機序は確からしい、臨床効果量は不確か」——これが2026年時点の正直な要約である。
三つの問いで章を貫く
- どこが変わるか——皮膚か、筋か、内臓か、脳か。灸法によって届く深さと範囲が違う。
- どちらに変わるか——血流は必ずしも増えない。初期には減る。二相性を理解しないと臨床判断を誤る。
- どれだけ続くか——刺激中だけの反応と、刺激後に残る反応は、別の機序による。
灸種別の局所血流
本書の中核。灸の種類が変われば、温度曲線が変わり、動く機序が変わり、血流反応の形と持続が変わる。
01血流を測る道具と単位
| 手法 | 測る対象 | 深さ | 長所 / 短所 |
|---|---|---|---|
| LDF レーザードプラ血流計 | 皮膚微小循環(1点) | 約1mm | 時間分解能が高い / 点計測のため再現性に難、複数プローブが推奨される[17] |
| LDPI/LSCI ドプラ・スペックル画像 | 面としての灌流 | 約1mm | 2次元マップが得られる / 時間分解能はLDFに劣る |
| 赤外サーモグラフィ | 皮膚温度(血流の代理) | 表面 | 非接触・広範囲 / 血流そのものではない |
| NIRS 近赤外分光 | 組織ヘモグロビン | 数cm | 深部・脳に届く / 定量性に限界 |
| 超音波ドプラ | 大血管の血流量 | 深部 | ml/分で定量できる / 微小循環は測れない |
| 爪郭毛細血管顕微鏡 | 毛細血管の形態・流速 | 表層 | 形態変化を直接観察 / 部位が爪郭に限定 |
LDF が出力する PU(perfusion unit/灌流単位)は相対値であり、絶対的な血流量ではない。したがって「PUが1.8増えた」という記述は、その研究内での比較にしか使えず、他研究の数値と直接比較できない。灸研究の論文を読むとき、PU の変化量を絶対的な効果量と誤読しないことが最も重要な作法である。
02灸種別の温度特性の実測
血流を論じる前に温度を確定させる。以下は市販の間接灸3種(台座灸=せんねん灸竹生島、温筒灸=カマヤミニ強、棒灸=温灸純艾條)を、擬似皮膚モデル上で熱電対により 0.55秒間隔・600秒間、各6回測定した比較データである[18]。
最高温度到達までの時間
| 灸種 | 最高温度 | 到達時間 | 42℃超過区間 | 刺激の性格 |
|---|---|---|---|---|
| 温筒灸 | 64.3℃ | 154.5秒 | 72.5–204.6秒(約132秒) | 急峻・高温・中持続 |
| 台座灸 | 55.9℃ | 160.7秒 | 133.1–220.0秒(約87秒) | 標準・短めの高温相 |
| 棒灸 20mm | 51.2℃ | 126.7秒 | 65.9–247.5秒(約182秒) | 最速立ち上がり・最長持続 |
| 棒灸 100mm | 30.1℃ | 182.5秒 | 到達せず | 広範囲の保温 |
棒灸は「高さ」で完全に別の灸になる。20mmでは台座灸に近い高温刺激(TRPV1閾値を182秒間超え続ける)を与えるが、100mmでは42℃に一度も達しない——つまり軸索反射を起こさず、TRPV3/TRPV4域の穏やかな保温にとどまる。棒灸を用いた研究論文を読むときは、保持距離が記載されていなければ、その刺激強度は不明と判断すべきである。これは灸研究の再現性を損なう最大の要因の一つである。
水平方向の広がり
同じ測定で、施灸部直下から 3.75 / 7.50 / 15.00 / 30.00 / 45.00 mm 外方に熱電対を配置したところ、台座灸・温筒灸では施灸部から 7.5mm 以上離れると温度変化はわずかであった[18]。物理的な加温範囲は、直径にしておよそ15mm程度の円に限られる。
深部方向への到達
実験動物を用い、熱電対で皮膚表面・皮下・筋層内の温度を同時測定した古典的研究では、皮下および筋層内の温度変化は、連続して数壮施灸することで増強されたと報告されている[20]。表皮上の温度変化とは異なるパターンを示すことから、著者らは「灸刺激が浅層のみでなく深部にまで及んでいる」と結論した。深部到達には壮数の累積が必要である——これが第4章の用量論につながる。
03灸種別の局所血流反応
ここが本書の核心である。灸種ごとに、実際に測定された血流反応を見ていく。
3-1 基本形:二相性反応(動物実験)
麻酔ラットの腓腹筋に灸様熱刺激(MTS:加熱7.5秒/休止12.5秒を毎分3回反復、ピーク温度は施行ごとに 42.7℃ → 49.2℃ → 51.0℃ と上昇)を加え、レーザードプラ血流計で筋血流を測定した研究[9]は、灸の局所血流反応の教科書的な原型を与える。
薬理学的・外科的な介入により、二つの相が別々の機序であることが分離された[9]。
| 相 | 変化量 | 機序 | 決定的な実験 |
|---|---|---|---|
| 第1相 一過性減少 | −23.3% | 節後性の筋交感神経線維の直接刺激(α受容体) | α遮断薬で完全に消失 |
| 第2相 持続的増加 | +25.5% | 軸索反射(CGRP)。中枢を介さない | CGRP遮断で完全に消失/刺激部位より下位での脊髄離断では影響なし |
灸の直後に血流は一度「下がる」。施灸直後に冷感や不快を訴える患者がいるのは、この交感神経性の第1相を反映している可能性がある。血流増加の本体は、刺激後 2〜7分 に現れ、約 14分 持続する。したがって「据えた直後に効果を判定してはならない」し、続けて他部位に据えるなら、この時間差を勘定に入れる。
3-2 間接灸(台座灸・温筒灸型)
健常者15名(平均20.8±0.4歳)の右 ST36(足三里)——深腓骨神経と前脛骨筋の直上——に、紙筒(高さ10mm、径5mm)に艾と緩衝材を充填した間接灸を5分間施行した研究[3]:
- 局所皮膚温は施灸開始 2分 後に 45.3 ± 3.3℃ のピークに到達
- 心拍数は 63.0 ± 7.8 → 60.8 ± 7.8 bpm へ有意に低下(p<0.05)
- 皮膚温と心拍数の間に有意な負の相関(r = −0.73, p<0.05)
- 血圧は安静時と有意差なし
皮膚温 45.3℃ は TRPV1 閾値(約43℃)を確実に超えており、間接灸は軸索反射を起こす強度に設計されていることが確認される。
また、大型の間接灸を用いた別の研究では、健常者30名を対象に赤外サーモグラフィとレーザードプラ灌流画像で評価し、3壮の施灸は1壮より大きな皮膚温と血流灌流の上昇をもたらしたと報告されている[21]。一方、後述する通り小型間接灸では1壮と3壮で差が出なかった[4]——灸のサイズが用量-反応関係の形を変える。
3-3 棒灸
健常成人80名(平均約27.8歳)を対象に、環境を 25±1℃・湿度30–40% に統制し、3チャネルLDFで 25分間(安静5分+介入15分+回復5分)記録した研究[2]。棒灸を専用ホルダーで高さと角度を一定に保ち、LU5(尺沢)または HT3(少海)に施行した。
| 施灸部位 | 測定部位 | 0–5分 | 5–10分 | 10–15分 | 終了後5分 |
|---|---|---|---|---|---|
| LU5(肺経) | 肺経遠位 | +0.83±0.15*** | +1.44±0.21*** | +1.81±0.27*** | +1.78±0.28*** |
| LU5(肺経) | 心経遠位 | −0.77〜−1.34** | 同左 | 同左 | 同左 |
| LU5(肺経) | HT3 | −0.31〜−0.44 n.s. | 同左 | 同左 | 同左 |
| HT3(心経) | 心経遠位 | +0.56±0.15** | +0.85±0.16*** | +0.92±0.16*** | +0.71±0.17** |
| HT3(心経) | 肺経遠位 | −0.31〜−0.41** | 同左 | 同左 | 同左 |
| HT3(心経) | LU5 | −0.12〜−0.19 n.s. | 同左 | 同左 | 同左 |
** p<0.01, *** p<0.001, n.s. 有意差なし
読み取るべき点は三つある。
- 灌流増加は時間とともに累積する——0–5分の +0.83 から 10–15分の +1.81 へ。棒灸は持続時間が効果量を決めるタイプの灸である(NOプラトー相の特徴と整合)。
- 効果は施灸終了後も少なくとも5分持続する(+1.78)。研究者自身が「総持続時間の判定にはより長い観察が必要」と述べている。
- 刺激していない側では灌流が有意に低下している。これは血液の再配分、あるいは対側の交感神経性血管収縮を示唆する。「どこかを温めると、どこかは冷える」可能性を示す重要な所見である。
著者らは、この分布が「解剖学的な距離ではなく経絡の走行に沿う」と結論している[2][22]。ただし、経絡の走行は同一の皮神経支配域・血管走行・筋区画とかなり重なるため、この所見が経絡の実在を証明するとは言えない。実際、別の研究グループはサーモグラフィで観察される「経絡様の構造」を技術的アーチファクトと結論している[23]。本書は、この所見を「経絡説の証拠」ではなく「灸の血流効果は施灸点を中心とした同心円状ではなく、長軸方向に伸びる異方性を持つ」という観察事実として採用する。
3-4 透熱灸(直接灸)
直接灸は他の灸法と質的に異なる。皮膚上で艾を燃やし切ることで点状の微小熱傷を作り、これが炎症反応を惹起する。日本の伝統的解説では、施灸部位に炎症が生じ、ヒスタミン等の炎症性物質により血管拡張と毛細血管透過性の亢進が起こる。放出の時間順序はヒスタミン・セロトニン(炎症後1〜5分がピーク)→ プロスタグランジン・ブラジキニンとされる[24]。
したがって透熱灸の血流反応は、軸索反射(数分)+炎症性充血(数時間〜数日)の二層構造をとると理解できる。他の灸法にはない、この持続的な炎症相こそが直接灸の独自性である。
直接灸(透熱灸)について、レーザードプラ等で局所血流の時間経過を定量した査読済みのヒト研究は、今回の調査範囲では見出せなかった。臨床で最も伝統的に用いられ、最も強い刺激を与える灸法の血流動態が、実は最も実測されていない——これが灸研究の最大の空白である。灸痕を伴う手法は倫理審査と盲検化が困難であり、研究が進みにくい構造的理由がある。
3-5 隔物灸
介在物(生姜・ニンニク・塩・味噌・枇杷葉)が熱容量と熱伝導率を決めるため、皮膚到達温度は艾の量だけでは決まらない。伝導熱のみを用いる分、輻射成分が遮られ、ピーク温度は低く、加温面積は介在物のサイズに規定される。血流反応としては軸索反射と NO の混合と推定されるが、介在物の種類ごとに温度曲線と血流反応を比較した質の高いヒト研究は乏しい。
3-6 灸頭鍼(温鍼)
刺入された金属鍼を熱伝導路とするため、原理的に皮膚を経由せず深部組織へ熱を運べる唯一の灸法である。持続的な加熱により深層まで温めうるとされ、日本では1970年代から研究の蓄積がある[25]。臨床エビデンスの面では、変形性膝関節症のメタ解析で火鍼灸法が他の灸法より疼痛軽減に優れる(SMD −0.56 vs −0.47)と報告されている[26]。また、良好胚の凍結融解胚移植に失敗した患者を対象とした研究で、温鍼が子宮血流灌流を改善したとの報告がある[27]。
3-7 灸種別まとめ
| 灸種 | 到達温度 | 主機序 | 血流反応の形 | 実測データの質 |
|---|---|---|---|---|
| 透熱灸 | 50℃超(点状) | 軸索反射+炎症性充血 | 急峻+長時間の炎症相 | ヒト定量データなし |
| 知熱灸 | 約43℃で終了 | 軸索反射(CGRP) | 短い立ち上がり | データ乏しい |
| 台座灸 | 55.9℃ | 軸索反射主体 | 二相性、施灸後2–7分にピーク | B(温度はE) |
| 温筒灸 | 64.3℃ | 軸索反射(強) | 最も急峻 | B(温度はE) |
| 棒灸 近距離 | 51.2℃ | 軸索反射+NO | 15分かけて累積上昇 | B |
| 棒灸 遠距離 | 30.1℃ | TRPV3/V4域の保温 | 穏やか・広範囲 | B |
| 隔物灸 | 介在物依存 | 伝導熱+化学刺激 | 面状・中温 | データ乏しい |
| 灸頭鍼 | 深部へ持続 | 深部伝導+軸索反射 | 持続的 | C〜D |
04用量-反応関係
壮数は増やすべきか
健常者を対象に、ST36 への小型間接灸を1壮(約3分)と3壮(連続9分)で比較し、下腿・足首・足の近位/遠位の皮膚温を、施灸直後・5・10・15・20分後に測定した研究[4]:
- 刺激側は全測定部位で有意に温度上昇
- 非刺激側も上昇した——全身性の反応の存在を示す
- 対照群では有意な変化なし
- 1壮群と3壮群の間に、左足首(p=0.031)を除いて有意差なし
著者らは「皮膚温を上昇させるには1壮で十分」と結論している。一方、前述の大型間接灸の研究では3壮が1壮に勝った[21]。
矛盾するように見える二つの結果は、指標が違えば用量-反応も違うと考えると整合する。皮膚温という表層指標は1壮で飽和するが、深部温度は壮数の累積で増強される(第2章、動物実験[20])。浅い目的(皮膚循環・自律神経反射のトリガー)なら1壮、深い目的(筋層・深部組織の加温)なら複数壮——これが現時点で最も合理的な用量設計の指針である。
受容体側の飽和——なぜ壮数を増やしても頭打ちになるのか
用量-反応が頭打ちになる理由は、熱の物理だけでは説明できない。『灸と血流の生理学①』第4章6節で述べた TRPV1 のタキフィラキシーが受容体側の説明を与える。反復熱刺激に対する応答減弱はヒトで約 25% と報告されており[66]、2壮目・3壮目は、同じ温度でも同じ神経応答を生まない。
一方、伝導による深部の加温はチャネルの脱感作とは無関係に累積する[20]。したがって「壮数を増やす意味は、神経応答の上乗せではなく、深部温度の積み上げにある」と整理できる。神経反射を狙うなら壮数より取穴の分散、深部加温を狙うなら壮数、という使い分けになる。
用量を規定する五つのパラメータ
| パラメータ | 影響 | 記録すべき最小項目 |
|---|---|---|
| ピーク温度 | どのTRPが発火するか(機序が変わる) | 製品名または実測温度 |
| 42℃超過時間 | HSP誘導と軸索反射の総量 | 施灸時間 |
| 壮数 | 深部温度の累積 | 壮数 |
| 面積 | 動員される受容器の総数 | 灸のサイズ、施灸点数 |
| 距離(棒灸) | 刺激強度を根本から変える | 保持高さ(mm) |
05作用の空間的な広がり
| 層 | 範囲 | 機序 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 物理的加温 | 直径約15mm、深さ皮下〜筋層 | 熱伝導・輻射 | 7.5mm以遠で温度変化わずか[18]/数壮で筋層まで到達[20] |
| 局所神経反射 | 施灸点から数cm、長軸方向に異方性 | 軸索反射(CGRP) | 棒灸で遠位部の灌流が有意増加[2] |
| 全身反射 | 対側・遠隔臓器 | 体性-自律神経反射 | 非刺激側の温度上昇[4]/腰部温度変化[28]/内臓血流[11] |
健常成人を対象としたRCTでは、BL40(委中)または LU5 への鍼または灸により、腰部の皮膚温と血流が変化したことが報告されている[28]。施灸部位から離れた領域の循環が変わりうることを、比較的質の高いデザインで示した数少ない例である。
物理的加温の範囲が直径15mm程度しかないという事実は、「広い範囲を温めたければ、点数を増やすか、箱灸・棒灸のような面の灸を使うしかない」ことを意味する。一方で神経反射の層は物理的範囲をはるかに超えるため、取穴の選択は「温めたい場所」ではなく「反射を起こしたい場所」で決めるべき場面がある。この二つの論理を混同しないことが、灸の臨床設計の要点である。
全身循環への波及
皮膚1点の加温が、心臓・内臓・脳・子宮の循環をどこまで動かすか。ここでは体性-自律神経反射が主役になる。
06心臓と自律神経
下腿 ST36 への5分間の間接灸で観察された変化[3]:
| 指標 | 安静時 | 施灸中 | 判定 |
|---|---|---|---|
| 局所皮膚温 | — | 45.3 ± 3.3℃(2分後ピーク) | — |
| 心拍数 | 63.0 ± 7.8 bpm | 60.8 ± 7.8 bpm | 有意に低下 (p<0.05) |
| RMSSD(迷走神経指標) | 52.0 ± 27.1 ms | 64.3 ± 37.2 ms | 有意に上昇 (p<0.05) |
| 血圧 | — | — | 有意差なし |
著者らは、42℃ 以上で活性化する熱感受性イオンチャネル(特に TRPV1)が起点となり、交感神経活動の減弱と末梢循環の増加を介して徐脈が生じたと考察している[3]。皮膚温と心拍数の負の相関(r = −0.73)は、刺激強度と自律神経反応が量的に対応していることを示す。
鍼と灸の違い
気虚証を対象としたRCTでは、鍼と灸で HRV への効き方が異なり、鍼は即時効果に、灸は長期効果に優れると報告されている[29]。慢性疲労症候群のRCTでも同様の傾向が示されている[30]。ST36 への灸、ST36 への鍼、CV12 への鍼を1日のウォッシュアウトを挟んでランダム順に行った疲労のパイロット試験では、灸後に心拍数が低下し、低下が持続した[31]。
07内臓循環
灸の内臓効果を最も定量的に示したのは、灸そのものではなく、温度制御された腹部温熱刺激の研究である。
健常者24名の臍周囲に、熱伝達制御装置を用いて 40–41℃ の温熱刺激を 20分間 加え、高解像度超音波で上腸間膜動脈(SMA)と上腕動脈(BA)の血流量を測定した[11]。
| 血管 | 安静時 | 変化 | 変化率 | 時間経過 |
|---|---|---|---|---|
| 上腸間膜動脈 | 822.1 ml/分 | → 1045.0 ml/分 | 約 +27% | 刺激中(p<.01)、10分後(p<.01)、20分後(p<.05)まで持続、30分後に基準値へ |
| 上腕動脈 | 246.3 ml/分 | → 195.3 ml/分 | 約 −21% | 刺激中は変化わずか、40分後に有意に低下(p<.01) |
研究者らは、温熱刺激が体性求心線維と副交感神経経路を活性化し、分節性の脊髄反射を介して末梢血管ではなく腸間膜循環に選択的な血管拡張を生じさせたと考察している[11]。
これは血流の「再配分」を定量的に捉えた稀な研究である。腹部を温めると内臓血流が27%増える一方、上腕の血流は21%減る。灸は血流を「増やす」のではなく、「配り直す」——この視点は、なぜ腹部への灸で手足が冷えることがあるのか、なぜ取穴部位の選択が決定的に重要なのかを説明する。第3章で見た棒灸研究の対側灌流低下[2]とも整合する。
その他の内臓系の知見
- 胃:灸の前処置がラット胃粘膜の HSP70 発現を高め、ストレス傷害から保護する[32]。ストレス誘発性の胃排出遅延を体性-自律神経反射を介して改善する[33]。
- 腎:慢性腎臓病に対する23件のRCT(n=1571)のメタ解析では、血清クレアチニン・24時間尿蛋白・BUN の有意な低下とQOLの改善が示されたが、eGFR・クレアチニンクリアランス・ヘモグロビンには効果がなかった[1]。機序として腎局所の毛細血管拡張と腎微小循環障害の軽減が挙げられている。
- 爪郭微小循環:亜健康状態の若年・中年者への灸(隔日20分×10回)で、毛細血管ループ形態・流入流出脚の径・血流パターンが有意に改善した(いずれも p<0.01)[34]。
08脳循環
近赤外イメージングにより、GV20(百会)および CV8(神闕)への電気温灸中の前頭皮質血流を連続測定した研究では、GV20 で20分・30分後に、CV8 で10分・20分・30分後に有意な変化が認められ、CV8(臍)のほうが効果発現が速かったと報告されている[35]。
虚血性脳卒中患者に ST36 と GB39(懸鐘)への灸を20日間連日施行し、経頭蓋ドプラ(TCD)で脳血管機能を評価した臨床試験では、脳血管運動反応と脳血流自動調節能に対する調節作用が認められたと結論されている[36]。
脳循環に関する灸研究は本数が少なく、いずれも小規模・非盲検である。NIRS は前頭部の表層皮膚血流の混入を受けやすく、頭部(GV20)への刺激では特に、測定しているのが脳血流なのか頭皮血流なのかの識別が難しい。この領域の知見は、現時点では仮説段階と位置づけるべきである。
09骨盤内・子宮循環
骨盤位矯正——灸が持つ最も強いエビデンス
2023年のCochraneレビュー(Coyle ME ら)は、合併症のない妊娠における骨盤位に対する灸・鍼・体位法・通常ケアを評価した 13試験・2181名を対象とした[37]。
- 灸+通常ケアは、通常ケア単独または偽灸+通常ケアと比べて、出生時の骨盤位をおそらく減少させる(7試験・1152名、確実性:中等度)
- 灸+鍼の併用が灸単独に勝るかは、データ不足で判定不能
英国 RCOG は2017年のGreen-topガイドラインに灸・鍼を収載し、妊娠33〜35週での灸の使用を検討してよいとしている[37]。これは灸が主要国の産科ガイドラインに記載された唯一の適応である。
機序:血流か、ホルモンか
提唱されている機序は、BL67(至陰)への刺激が胎盤エストロゲンとプロスタグランジンの分泌を促し、子宮の穏やかな収縮を介して胎動を増加させるというものである[37][38]。これはCochraneレビューが仮説として挙げている機序であり、機序そのものが検証されたわけではない。Cardini と Weixin の1998年 JAMA 研究では:
- 胎動:灸群 48.45回/時 vs 通常ケア群 35.35回/時
- 頭位への回転:灸群 75.4% vs 対照群 47.7%
骨盤位矯正の機序として「子宮血流の増加」を裏づける直接的な測定データは、今回の調査では確認できなかった。優勢な仮説は胎動増加であり、血流はその媒介変数として推定されているにすぎない。灸の最も強いエビデンスを持つ適応が、実は血流を介するのかどうか分かっていない——この率直な事実を記録しておく。
子宮動脈の血行動態
経穴刺激により子宮動脈の抵抗指数(RI)と拍動指数(PI)が有意に低下したとする報告があり、機序は主として交感神経活動の調節を介すると考えられている[39]。良好胚の凍結融解胚移植に失敗した患者への温鍼で子宮血流灌流が改善したとの報告もある[27]。ただし電気鍼では逆に子宮動脈血流が15分以内に減少し PI が上昇したという報告もあり[40]、刺激様式によって方向が逆転しうる点に注意が必要である。
10骨格筋と深部組織
第3章で詳述した通り、麻酔ラットの腓腹筋における灸様熱刺激の反応は −23.3% → +25.5%(約14分持続)の二相性であり、血圧変化を伴わない局所現象である[9]。
ヒトにおいては、鍼刺激による局所血流変化を扱った系統的レビュー(8件のRCT、計205名)がある[5]。健常者を対象とした7件のうち4件で対照と比べ有意な血流増加が示され、1件では刺入直後の血流減少が観察された。線維筋痛症・僧帽筋筋痛症の患者研究では皮膚と筋の血流が有意に増加した。機序としては NO、サブスタンスP と CGRP、交感神経活動の抑制が挙げられている。
この系統的レビューは、灸の研究を明示的に除外している(手技鍼のみを対象)[5]。したがって、この結論を灸に外挿することはできない。灸の局所血流について、ヒトを対象とした系統的レビューは、2026年8月時点で存在しない。これが本書が扱う領域の、最も端的な現状である。
11遠隔部位と対側反応
| 施灸部位 | 観察部位 | 反応 | 出典 |
|---|---|---|---|
| ST36(下腿) | 同側の足首・足 | 皮膚温上昇 | [4] |
| ST36(下腿) | 非刺激側の下肢 | 皮膚温上昇(全身反応) | [4] |
| LU5(前腕) | 同経絡の遠位 | 灌流 +1.81 PU | [2] |
| LU5(前腕) | 隣接する他経絡の遠位 | 灌流 −0.77〜−1.34 PU(低下) | [2] |
| BL40 / LU5 | 腰部 | 皮膚温・血流の変化 | [28] |
| ST36 / LI4 | 顔面各部 | 部位により異なる温度変化 | [41] |
| 腹部 | 上腕動脈 | 血流 −21%(40分後) | [11] |
遠隔反応は一様な「全身の血流増加」ではない。上昇する部位と低下する部位が同時に存在する。灸の全身作用は、血流の総量を増やす作用ではなく、配分パターンを組み替える作用として理解すべきである。臨床では「どこを増やしたいか」だけでなく「どこが減ってよいか」まで考えることになる。
臨床と方法論
ここまでの生理学が、実際の患者でどこまで裏づけられているか。そして、なぜ裏づけがこれほど弱いのか。
12疾患別エビデンス一覧
| 適応 | 研究規模 | 主な結果 | 確実性 |
|---|---|---|---|
| 骨盤位矯正 | Cochrane 13試験 2181名[37] | 灸+通常ケアで出生時骨盤位が減少(7試験1152名) | 中等度 |
| 変形性膝関節症 | 39 RCT[42]/18 RCT[26] | 有効率 RR 1.39 (1.19–1.62)、VAS・長期WOMAC改善 | 低〜中 |
| 慢性腎臓病 | 23 RCT n=1571[1] | Cr・尿蛋白・BUN低下、QOL改善。eGFRは不変 | 低 |
| 糖尿病性末梢神経障害 | SR/メタ解析[43]、RCT n=40[44] | 神経伝導速度と症状の改善 | 低 |
| 冷え症(hiesho) | 多施設RCT n=49[45] | KI1・SP6・ST36へのセルフ温灸をレッグウォーマーと比較 | 低 |
| 亜健康状態 | 爪郭微小循環研究[34] | 毛細血管形態・血流パターンの改善 (p<0.01) | 低 |
| 慢性疲労症候群 | RCT[30] | HRV指標の改善。灸は長期効果に優れる | 低 |
| 慢性心不全 | SR/メタ解析[46] | 補助療法としての有効性を報告 | 低 |
| 本態性高血圧 | KI1へのSR[47]、RCT進行中[48] | 降圧補助の可能性。証拠は限定的 | 非常に低 |
| 腰椎椎間板ヘルニア | ネットワークメタ解析 50 RCT[49] | 神経根微小循環の改善が機序として提唱 | 低 |
確実性が「中等度」に達しているのは骨盤位矯正のみである。他はすべて「低」以下——効果推定値が将来の研究で大きく変わりうることを意味する。臨床で灸を勧めるとき、これらの数値を確定した効果として提示してはならない。「機序には生理学的な裏づけがあり、臨床試験では良好な結果が報告されているが、研究の質が高くない」——これが誠実な説明である。
13安全性と禁忌
症例報告の系統的レビュー[50]および有害事象の系統的レビュー[51]により報告されている有害事象:
| 頻度 | 事象 |
|---|---|
| 比較的多い | 発赤、水疱、瘙痒感、不快感、煙による不快、疲労感、胃部不快 |
| 臨床試験で報告 | 熱傷、頭痛、症状の一時的増悪(フレアアップ) |
| まれ・重篤 | アレルギー反応、蜂窩織炎、C型肝炎感染、基底細胞癌、眼瞼外反、色素沈着、胎児機能不全、早産、死亡例 |
発生率は不明である——これらのレビューが一致して指摘する点である[50][51]。安全性に影響する因子として、体位、施灸時間、艾と皮膚の距離、施術者の熟練度、患者の状態、煙の有無、治療環境が挙げられている[50]。
血流の観点からの禁忌・注意
- 知覚鈍麻のある部位——糖尿病性神経障害、脊髄損傷、麻痺側。熱さを感じられないため熱傷リスクが最も高い。皮肉なことに、これらは灸の適応とされる病態と重なる。
- 循環障害のある部位——重度の末梢動脈疾患。熱に対する血流増加(放熱)反応が起こらず、局所に熱が蓄積する。
- 浮腫のある部位——皮膚が菲薄化し熱傷閾値が下がる。
- 抗凝固療法中——直接灸による組織損傷部位の出血・治癒遅延。
- 妊娠——BL67 への灸は骨盤位矯正としてエビデンスがあるが、それ以外の部位・時期には慎重を要する。
- 換気——煙には微量のアルデヒド・フェノール・ベンゼン系化合物が含まれる[15]。閉鎖空間での連続施術は施術者自身の曝露が問題になる。無煙灸という選択肢がある。
14研究方法論と今後の課題
偽灸(sham moxibustion)は成立するか
灸は「熱い」という明白な感覚を伴うため、盲検化は困難とされてきた。しかし妥当性が検証された偽灸デバイスが存在する[52]。真の灸と偽の灸は外観・燃焼過程・燃えかすが同一だが、偽灸の台座には断熱層があり、熱と煙が皮膚に到達しない。検証試験では被験者・施術者ともに盲検化に成功し、「本物を受けたと思うか」の回答に有意差がなかった[52]。変形性膝関節症を対象とした二重盲検プラセボ対照試験でも実際に用いられている[53]。
断熱層が熱を遮断するということは、偽灸は温熱刺激をまったく与えていないということである。これは「灸の温熱効果」を検証するには適切だが、患者は温感の有無をある程度識別しうる。灸の盲検化は、鍼のそれよりさらに難しい問題として残っている。
灸研究に不足しているもの
- 灸種の直接比較試験——同一被験者・同一経穴で、透熱灸/台座灸/棒灸/灸頭鍼の血流反応を比較した研究がほぼ存在しない。本書が第3章の総覧表を「灸種ごとに異なる研究の寄せ集め」として作らざるを得なかった理由である。
- 透熱灸の定量的血流データ——最も伝統的な灸法の血流動態が実測されていない。
- 刺激パラメータの標準報告——特に棒灸の保持距離。第2章で見た通り、距離が20mmか100mmかで刺激は別物になる。
- 長時間の追跡——既存研究の多くは施灸後5〜30分で観察を打ち切っている。動物実験が示す14分の持続[9]を超えて、何時間・何日効果が残るのかは未知である。
- 反復施灸による血管機能の変化——温熱療法が8週間でFMDを約2倍にした[13]ように、灸の継続が内皮機能を改善するかは検証されていない。臨床的にも研究的にも、これが最も価値の高い未解決問題である。
- ヒトにおける TRPV1 タキフィラキシーの実測——『灸と血流の生理学①』第4章6節の議論は他分野からの外挿にとどまる。連続壮数・施灸間隔・取穴の分散が受容体応答にどう影響するかを、ヒトで直接測定した研究がない。これが検証されれば、壮数と施灸間隔という最も基本的な臨床パラメータに、初めて分子的な根拠が与えられる。
本書の結論
機序は確かである。灸の温熱がTRPV1を発火させ、軸索反射を介してCGRPを放出し、局所血流を増やすことは、薬理学的遮断実験によって因果的に示されている[9]。血流反応が二相性であること、作用範囲が物理層・神経反射層・全身反射層の三層をなすこと、そして全身作用が「増加」ではなく「再配分」であることも、複数の独立した研究で一致している。
定量は不足している。灸種ごとの血流効果量の比較、効果の持続時間、反復による長期変化——臨床判断に直結するこれらの数値は、まだ揃っていない。
この非対称性を明示することが、本書の最も重要な仕事である。
理解度チェック
本書の内容から9問。選択するとその場で正誤と解説が出ます。設問はすべて本文に記載した報告値・記述に対応しており、各問には該当章へのリンクを付けました。自己確認のための演習であり、資格や技能を証明するものではありません。
レーザードップラー血流計(LDF)で得られた数値を読むとき、最も注意すべきことは何か。
LDFは皮膚微小循環を1点で測る手法で、深さは約1mm、出力は相対値である。本書は「PU の変化量を絶対的な効果量と誤読しないことが最も重要な作法」としている。点計測のため再現性に難があり、複数プローブの使用が推奨されている。根拠:第1章/[17]
棒灸について、実測から言えることはどれか。
棒灸は距離20mmで51.2℃、100mmで30.1℃と報告されており、100mmでは42℃に一度も到達しない。距離を変えるだけで灸は別物の刺激になる。根拠:第2章/[18]
灸様の温熱刺激に対する局所血流の反応は、どんな形を示すと報告されているか。
ラットの筋血流では低下相(平均 −23.3%)に続いて増加相(平均 +25.5%)が現れ、血圧は変化しなかった。施灸直後に一度冷たく感じられても、失敗の徴候とは限らない。低下相は交感神経性、増加相は軸索反射性という別の機序である。根拠:第3章/[9]
壮数を増やしたときの反応について、正しいのはどれか。
皮膚温という表層指標は1壮で飽和する一方、深部温度は連続して数壮据えることで増強されると報告されている。表層の指標が頭打ちになっても、深部では起きていることがある。根拠:第4章/[20]
灸の作用範囲について、本書はどう整理しているか。
物理的加温は施灸部から7.5mm以遠で温度変化がわずかになる一方、局所神経反射は数cm、全身反射は対側や遠隔臓器にまで及ぶ。層ごとに範囲と機序が違う。根拠:第5章
健常者の下腿への間接灸(ST36、5分)で観察された変化はどれか。
血圧は変化せず心拍数のみが低下し、副交感神経指標(RMSSD)が上昇した(n=15)。皮膚温と心拍数には負の相関(r = −0.73)が認められている。根拠:第6章/[3]
骨盤位(逆子)に対する灸について、本書はどう位置づけているか。
BL67(至陰)への灸は、灸が主要国の産科ガイドラインに記載された唯一の適応である。ただし提唱されている機序(胎盤エストロゲンとプロスタグランジンを介した胎動増加)はCochraneレビューが仮説として挙げているもので、機序そのものが検証されたわけではない。根拠:第9章
灸の有害事象として最も多く報告されているものはどれか。
症例報告の系統的レビューでも臨床試験でも、灸の有害事象として中心に挙がるのは熱傷である。ただし報告される頻度は試験によって大きく異なり、これは安全性そのものの差ではなく何を有害事象として記録したかの差である可能性が高い。根拠:第13章
灸の全身作用について、本書の結論はどれか。
皮膚血流が増えた分、どこかが減っている。全身作用は増加ではなく再配分である。この点は複数の独立した研究で一致している。一方、灸種ごとの効果量の比較や効果の持続時間といった定量データはまだ揃っていない。根拠:第14章
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引用文献
本書の記述はすべて以下の一次・二次資料に基づく。階層E(非査読)の資料は本文中でその旨を明記した。
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- Kuge H, et al. Effect of Different Dosages of ST36 Indirect Moxibustion on the Skin Temperature of the Lower Legs and Feet. Medicines (Basel). 2018;5(2):47. PMC6023346
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灸と血流の生理学② 第1版 2026年8月17日発行
発行:合同会社YOMOGI BASE(鍼灸エビデンス・ライブラリ)
本書の位置づけ。本書は『灸と血流の生理学』(第2版・全24章)を読み進めやすい分量に分けた二分冊の②であり、灸種別の局所血流から全身循環・臨床エビデンス・研究方法論までを収める。基礎循環生理学と灸の物理は①に収めた。本書の各章は①の生理学を前提としているため、①を先に読まれたい。
数値の出所方針。本書は2026年8月時点で公開されている一次文献・系統的レビューに基づいて編纂した。数値はすべて原著の報告値であり、本書の著者が計算・推定した値は含まない。
調査範囲。分冊にあたり、本書の本文が引用している文献のみを引用文献欄に掲げ、番号は原本の通し番号を保持した。図3-1は報告値に基づく模式図であり実測波形ではない。
本書の限界。灸種ごとの血流効果量の比較、効果の持続時間、反復による長期変化——臨床判断に直結するこれらの数値は、まだ揃っていない。未解決問題は第14章に掲げた。
発行と利益相反。本書の発行者は合同会社YOMOGI BASEである。同社はよもぎ・お灸に関連する商品を扱う事業者であり、この利害関係を開示したうえで、本書では特定の商品・サービス・銘柄に一切言及せず、効能をうたわない編集方針を採っている。文献の選定・数値の引用・空白の明示は、事業上の利害と独立して行った。自社および自社関係者による発信は、査読の有無にかかわらず出典として用いない。
ご利用にあたって。本書は教育・研究目的の学術情報であり、個々の患者に対する診断・治療方針を示すものではない。臨床判断は、施術者自身の責任において、患者の状態と関連法規に基づいて行われたい。
改版履歴。原本『灸と血流の生理学』(全24章)第2版(2026年8月)では、『灸と血流の生理学①』第4章を「温度受容の分子基盤——TRPチャネル」として全面的に書き改め、TRPチャネルの全体像、TRPV1の可塑的閾値とリン酸化による感作、灸を対象とした TRPV1 の直接的証拠(ノックアウトマウス・経穴発現)、脱感作/タキフィラキシー、内皮TRPV4の増幅ループ、および分子カスケード図を追加した。
2026年8月17日 二分冊化にともなう第1版。章番号を分冊内で振り直し、姉妹巻の章への参照はリンクで接続した。
2026年8月17日 出典照合版。全引用文献をNCBI(PubMed/PMC)・Crossref・J-STAGEの書誌レコードに当たって実在と書誌を確認し、著者名・巻号頁を補完した。孫引き・誤帰属・非査読ソースは一次文献に差し替え、差し替えた箇所は引用文献欄に注記した。編者が報告値を超えて述べる示唆は1冊2件までとする規約を序章に明記した。